「 テキトーフォーミー 」のはじまりである「かばおのノート」。
シンプルながら独創的なフォルムのこのノートブックは、今までにないものです。
これは、そんな不思議なノートブックが生まれるまでの記録です。
180度フラットに、できれば360度、開きたい
工場に「カバ」がいた
「 テキトーフォーミー 」のはじめのプロダクトとして、ノートブックを作ることは決まっていました。
しかし、「かばおのノート」ができあがったのには、運命の出会いがあったからです。
ふと、会社の工場の一角の古い機械が目に留まりました。
この機械は、上製本(=ハードカバーと呼ばれたりもします)を作る工程で使用するものです。
名前は「下固め機」とか「背固め機」とかいいます。
聞けば、30年以上前から、この工場にいるのだとか。
この機械に「カバ」を見たのです。
そして、この機械が鎮座する工場に30年以上住み続けているカバの妖精「かばお」が全てを繋げてくれました。
運命の機械との出会いから生まれたオリジナル製本
この背固め機のことを「カバ機械」と呼ぶことにします。
前述したとおり、カバ機械はハードカバーの下準備の工程に使われます。
名前のまま、本の背を固める工程です。
このカバ機械の顔に「かばお」という妖精を見た時、私は「かばおのノート」を作ることを決めました。
世の中にある180度開くノートブックは、そのほとんどが「糸かがり製本」という製法を用いて作られています。
手帳などに使われている製法です。
手帳はよく開きますよね。
糸かがり製本は、糸かがり機というものがないとできません。
しかし、うちには糸かがり機がありません。
糸かがりと同様に開く本を、うちの設備で作るのは無理か―――。
今まで「読むため」の本を作り続けてきましたから、「書くため」のノートを作ろうと思うと畑違いなのですよね。
そのことを痛感しました。
少し心が折れて、カバ機械とかばおに申し訳なく思いました。
ハードカバーのノートでも作ろうか―――。
カバ機械で背固めをする。
そして、その工程の後に上製本ラインに乗せて、背中に色々なものがついて、表紙がついて、ハードカバーが出来上がります(ざっくり)。
でも、それでは360度はおろか、180度フラットにも開きません。
重厚なハードカバーのノートではなくて、もっとライトでいてシンプルなものができないか―――。
「削ぐ」ことは答えへの近道だなと日々感じます。
そんなことを私に教えてくれたのも、かばお。
そして導いた答えは、「カバ機械の工程で、やめてみる」。
カバ機械を通した直後の本は、カバッと、いや、ガバッと、私の手の中で開いたのです。
本来はここで「やめる」なんて製本屋としてありえないのですが、私が一人のノートユーザーとして考えた時に「わざわざ開きが悪くなる表紙が巻かれている必要は“ない”」のです。
ハードカバーの「装丁」という装飾部分を削ぎ落とせば、十分に「開く」のです。
そして生まれたのが、オリジナル製本「まんま背固め製本」です。