経営理念としてのみんなにこにこ
よく、「みんなにこにこって何ですか?」と聞かれます。
私はいつも「まあ、いわゆる“三方よし”が、かばおの口から出たらこうなったんです」と返してきました。
でも、自分で口にしながらどこか違和感を覚えていました。
三方よしとは近江商人の言葉で、「売り手よし(企業)、買い手よし(顧客)、世間よし(社会)」を表すものです(もっと深い真意は研究者に委ねます)。
ですが、現代のビジネスにおいては「方」がもっと多いですよね。仕入先、外注、スタッフ、家族、そして自分自身。これらをたった三方に収めることは難しく、四方よし、五方よし、六方よしと言う方もいます。
私もその通りだと思っていました。ただ、いちいち数えるのも、どこまで増えるのかを考えるのも、きりがない。そこで生まれたのがみんなにこにこという言葉です。
ここまで話すと、次に聞かれます。
「みんなにこにこなんて、実現可能なんでしょうか?」
私は請負加工の製造業を経営してきました。
みんなにこにこを理念に掲げながらも、「三方よしなんて現実にありえるのだろうか?」と常に疑問を持っていました。
残念ながら、お商売の三方よしは、現代では実現が難しいと思っています。
現実は、誰かが笑えば、別の誰かが泣いている。そんなことばかりです。
中小零細の現場にいると、三方よしという言葉を聞くたびに、どこかに無視されている人の影を感じて、しんどくなることも多くありました。
では、みんなにこにこも不可能なのでしょうか?
結論から言えば、私はみんなにこにこは実現可能だと思っています。
みんなにこにこは、全員を同時に笑顔にすることではありません。
そんな魔法は存在しないからです。
では何なのか。
私たちの考えるみんなにこにことは、にこにこの総量を増やすこと。
今日出会う誰かの、明日関わる誰かの、そして自分自身のにこにこが少しずつ増えていくように。
そのためにできる選択・決断・行動を積み重ねていく。
それが、私たちの考えるみんなにこにこです。
かばおは「みんなにこにこがいいね」という口癖をもっています。
私たちが判断に迷ったとき、その口癖が背中をそっと押してくれます。
みんなにこにこな生き方
同じように、日常生活にもみんなにこにこが広がればいいなと思って、私たちはテキトーフォーミーというブランドや言葉、かばおというキャラクターやメッセージを発信しています。
最近は、「生きづらさ」という言葉をよく耳にします。SNSでも、ニュースでも、日常の会話でも。
いつの時代にも生きづらさはあったはずですが、今これほど語られるのは、それを抱える人が増えているからなのかもしれません。
そして、「生きづらさをなくすには」「誰も取り残さない社会へ」といったスローガンもよく見かけます。
でも、生きづらさそのものをなくすことはできないと思っています。
人はそれぞれ違い、環境も価値観も異なります。社会の仕組みも完璧にはならない。
だから、生きづらさがゼロになる世界は、きっと来ない。
ただし、「づらさの度合い」をゆるめることはできる。
ここがみんなにこにこの核です。
「みんなにこにこ=みんな常に笑っている」という意味ではありません。
むしろ逆で、
・怒ってもいい
・泣いてもいい
・うまくできなくてもいい
そのうえで、ちょっとだけ優しくあれる状態——それがみんなにこにこです。
かばおの口癖「そんな日もあるよね」は、自分にも相手にも向けられる許容の言葉です。
「これが私のテキトーフォーミーなんだ」
「それが君のテキトーフォーミーなんだね」
そんな世界です。
みんなにこにこは、社会の大きな問題を一気に解決する考え方ではありません。
それよりも、
・今日がちょっと楽になる
・誰かと話しやすくなる
・自分や人を許せる瞬間が増える
そういう日常を、静かに広げていく生き方です。
生きづらさはなくせない。
でも、ゆるめることならできる。
そのためにテキトーフォーミーがあり、そのために、かばおがいます。

